第4部 ふかめる 4.37

インドの卵料理 — マサラオムレツとエッグベジタリアンの世界

インドの朝食定番マサラオムレツ、保存食の卵アチャール、ベジとノンベジの中間「エッグベジタリアン」まで。家庭で作れるスパイスの配合と、辛さを締めるレモンの使い方を講座の実演からまとめます。

インドの卵料理 — マサラオムレツとエッグベジタリアンの世界

「インドの卵料理」というと卵カレーくらいしか思い浮かばないかもしれません。でもインドでは朝食のオムレツから保存食のアチャールまで、卵はスパイスと結びついて幅広く食べられています。この記事では、ホテルの朝食会場で定番のマサラオムレツ、ゆで卵を漬け込む卵のアチャール、そしてインド独特の食べ分け「エッグベジタリアン」という考え方を、講座の実演をもとに紹介します。

目次6

マサラオムレツ — 朝のオムレツにスパイスとパパド

マサラオムレツは、インドのホテルの朝食会場で必ず注文できる一品です。目玉焼きやプレーンオムレツと並んで、卵にスパイスと香味野菜を混ぜて焼く。家庭でも朝起きてさっと作る、ごく日常の料理です。

「みんな朝起きて作ります、朝のオムレツ。基本はそのまま、なんか入れたりしない。同じようにドーサもアレンジができて、玉ねぎやパプリカ、パクチー、青唐が入ったらウッタパンっていうものになる」 — メタ・バラッツ

卵2個分に対するスパイスの配合は、コリアンダー小さじ1/4、クミン小さじ1/4、レッドペッパー小さじ1/8、ブラックペッパー小さじ1/8、塩小さじ1/2。辛味は控えめで、ブラックペッパーがピリッと効くのが特徴です。ここに玉ねぎ・ニンニク・パクチーのみじん切りを混ぜます。玉ねぎは紫を使うと色がきれいに出ます。

面白いのがパパドの使い方。豆でできた揚げせんべいを砕いてオムレツに混ぜ込みます。ホテルで頼んでも入っていない、家庭ならではのアレンジです。

「お好み焼きにベビースターラーメンを入れるみたいな、てんかす的な役割かもしれない」 — メタ・バラッツ

油は大さじ3とやや多め。両面をしっかり焼けば出来上がりです。中身はパプリカ、ピーマン、セロリ、人参、チーズと何でも合います。茹でたじゃがいもを入れる、サンドイッチに挟むなど、お好み焼きのように自由が利きます。

卵のアチャール — ゆで卵をスパイスオイルに漬ける保存食

アチャールは「漬物・保存食」にあたる料理です。大量の塩と油、お酢やレモンの酸味と組み合わせて漬け込みます。卵のアチャールは、ゆで卵をスパイスを効かせた油に漬けたもの。短時間でも卵に色がつき、しっかり味が入ります。

ゆで卵は12分、固めに茹でます。漬けダレに使うスパイスは、マスタードシード・フェヌグリークシード・アジョワンシード・クミン・ヒング。アジョワンの清涼感ある香りが、油の濃いアチャールによく合います。油は120mlとたっぷり、そこにレモン汁2個分とお酢大さじ1を加えます。レッドペッパー小さじ2にカシミリチリ小さじ1と辛味は強めですが、レモンと酢の酸味が入ると味が締まって、見た目ほど辛く感じません。

「ゆで卵6個じゃなくても10個でも20個でもおいしくできます。スパイスを変えたり辛さを変えたり、作り置きしておけるのがアチャールのいいところ」 — メタ・バラッツ

ホールスパイスは油でパチパチと弾ける(ポップする)まで熱し、火を止めてからニンニク生姜を加えます。焦がすと苦くなるので、温度を下げながらそれぞれに火を入れていくのがコツです。

クラッシュエッグサラダ — チャートマサラで仕上げる卵サラダ

ゆで卵とアボカドを潰して混ぜる卵サラダ。味の決め手はチャートマサラです。塩味も酸味も含むミックスなので、これとマヨネーズ大さじ2、レモン汁を合わせるだけで味が決まります。

アボカドは切ったらすぐレモン汁小さじ1をまぶして変色を防ぎます。硬めのアボカドは小さく刻み、柔らかければ混ぜながら潰します。仕上げにミントとパクチーを加えます。茹でたじゃがいもやかぼちゃ、エビなどを加えてもよく、アチャールの漬けダレを少し混ぜると風味が変わります。

エッグベジタリアン — ベジとノンベジの中間という食べ分け

インドの卵料理を理解するうえで欠かせないのが、食べ分けの文化です。肉も魚も食べないベジタリアン、肉を食べるノンベジタリアン、その中間に位置するのがエッグベジタリアン。肉は食べないけれど卵は食べる、という人たちが一定数います。

「宗教上、卵はいいですよという人たちが結構いる。私も学生時代は南の山の上の学校にいましたが、ベジタリアンとノンベジタリアンで席が分かれていて、エッグベジタリアン用の席もありました」 — メタ・バラッツ

給食もそれぞれに合わせて分けられ、エッグベジタリアン用に別の席が用意されている。そんな環境があるほど、卵は食の選択肢として根づいています。卵カレーを作るときは、ゆで卵に縦の切り込みを入れてグレービーを染み込ませます。素揚げしてから入れる作り方もあります。西インドではイラニカフェ由来のキーマカレーに目玉焼きを乗せる組み合わせも知られています。

料理 卵の状態 味の核となるスパイス
マサラオムレツ 生卵を溶く ブラックペッパー・クミン
卵のアチャール ゆで卵を漬ける アジョワン・マスタード・フェヌグリーク
クラッシュエッグサラダ ゆで卵を潰す チャートマサラ

まとめ

  • マサラオムレツは卵2個にコリアンダー・クミン各小さじ1/4とブラックペッパー小さじ1/8が基本。砕いたパパドを混ぜるとてんかすのような食感が加わる。
  • 卵のアチャールは12分茹での固ゆで卵を、油120mlにレモン汁2個分と酢を加えたスパイスオイルに漬ける保存食。酸味で辛さが締まる。
  • クラッシュエッグサラダはチャートマサラが決め手。アボカドはレモン汁で変色を防いでから混ぜる。
  • 肉は食べないが卵は食べる「エッグベジタリアン」はインドの中間的な食の立場で、学校で専用の席が設けられるほど根づいている。

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