食材帖
パニール(インドのフレッシュチーズ)— 牛乳と酸で家庭で作れる、煮ても崩れない具材
パニールは牛乳をレモン汁などの酸で固めたインドのフレッシュチーズ。家での作り方(牛乳1Lにレモン汁40ml)、絞り方で変わる食感、焼く・煮る使い分け、サグカレーやおつまみへの展開までまとめます。
インド料理屋のほうれん草カレーに入っている白い角切り、あれがパニールです。実はスーパーの牛乳とレモンだけで家でも作れます。この記事では、パニールが何なのか、牛乳1リットルから作る手順、絞り加減で変わる食感、そして焼く・煮るの使い分けまでをまとめます。
パニールとは — 牛乳を酸で固めたフレッシュチーズ
パニールはカッテージチーズの一種で、牛乳にレモン汁などの酸を加えて分離させ、それを漉して固めたフレッシュチーズです。レンネット(凝乳酵素)や熟成を使わないので、その日のうちにできます。バラッツさんは作り方の発想そのものを次のように説明します。
「パニールって牛乳からレモン汁を入れて、それがフレッシュチーズ。ああいうのも日本にある発想です」 — メタ・バラッツ
インド全土で食べられますが、乳製品がおいしいとされる北インド・パンジャーブのものが格別とされます。バラッツさんは子どもの頃、ムンバイのシーク教徒の家族が、パンジャーブで夜に作りたてのパニールを夜行列車に乗せ、10〜15時間かけて翌朝ムンバイの駅で受け取って食べていた、という思い出を語っています。それだけ鮮度が味を左右する食材です。
家での作り方 — 牛乳1リットルにレモン汁40ml
材料は牛乳1リットル(最近多い900mlでも可)、レモン汁40ml(レモン約1個半ぶん)、塩少々。香り付けにカルダモンを少し。手順はシンプルです。
- 鍋に牛乳とカルダモンを入れ、沸騰させる。カルダモンの香りが牛乳に移っていくのを待つ。
- ぐつぐつしてきたら弱め、レモン汁を入れる。1リットルに対しておよそ40mlの酸で分離が始まる。
- 白い固形(カード)と透明な水分(ホエー)に分離したら、ザルにキッチンペーパーやガーゼを敷いて漉す。
ポイントは酸の量です。レモンがなければお酢でも代用できます。逆に牛乳以外(豆乳など)を混ぜたい場合は、後から入れると分離してしまうので、まずパニールだけ作って漉し、あとで合体させるのがコツです。
絞り加減で食感が変わる
漉したあと、どれだけ水分を抜くかでパニールは別物になります。同じ素材で、ゆるいフレッシュ状態からカチカチの固形まで作り分けられます。
| 状態 | 絞り・置き方 | 向く使い方 |
|---|---|---|
| ゆるめ | 軽く漉しただけ | サラダに混ぜる、ほうれん草カレーにかける |
| 中くらい | 押して脱水、または軽く絞る | 蜂蜜と塩をまぶしてそのまま食べる |
| 固形 | 型に入れて一晩冷蔵庫で固める | 角に切ってスライス、マリネして焼く |
バラッツさんは固める工程をこう表現します。
「一晩冷蔵庫で固めておくと、カチカチのバターみたいな固形の真四角のものができる。それをスライスしてマリネして焼くと、そのまま食べてもおいしい」 — メタ・バラッツ
固めたパニールは加熱しても溶け落ちず形が残るので、フライパンで焼き目をつけたり、カレーに入れて煮込んでも崩れにくいのが持ち味です。
味付けと使い回し
パニールは作るときと作った後、どちらでも味を足せます。
- クミンを大量に:分離後のカードにクミンを多めに混ぜると、チーズと相性よくまとまる。フレッシュなハーブを混ぜてもよい。
- 蜂蜜と塩:中くらいに絞ったものに蜂蜜と塩をまぶすと、そのままおつまみになる。
- パラックパニール/サグカレー:ほうれん草など青菜(サグ)のカレーに角切りで入れる定番。ほうれん草の甘みと乳製品の相性が良い。
漉したときに出るホエー(透明な水分)も捨てません。バラッツさんによれば、チャパティの生地を水の代わりにこのホエーで練ると「よりおいしくなる」とのこと。1リットルの牛乳から、チーズと生地用の水分の両方が取れます。
まとめ
- パニールは牛乳を酸(レモン汁・酢)で分離させて漉す、その日に作れるフレッシュチーズ。
- 分量の目安は牛乳1リットルにレモン汁40ml。沸騰時にカルダモンを入れると香りが移る。
- 絞り加減でゆるめ〜固形に作り分けられ、一晩固めればスライスして焼ける。
- クミンや蜂蜜+塩で味を変えられ、漉して残るホエーはチャパティ生地に使える。

