第3部 くみたてる 3.19

白いカレー — ターメリックを抜いて色を抑える配合の考え方

ターメリックを抜くと黄色は消える。白いカレーを作るために、どのスパイスを外し、何で香りを補い、玉ねぎとホールスパイスの炒め方をどう変えるか。西インド・コラプールのパンダラ・ラッサを下敷きに、色を抑える配合の考え方をまとめます。

図版ヒーロー画像(横長・食卓やスパイスの寄り)

カレーを白く仕上げたいのに、いつも通り作ると茶色や黄色になってしまう。原因はだいたい二つ、ターメリックの黄色と、玉ねぎ・ホールスパイスを炒めすぎた茶色です。白いカレーは「白くするための材料を足す」より「色をつける要素を外す」ことで近づきます。この記事では、西インド・コラプールの名物パンダラ・ラッサ(ホワイトチキンカレー)を下敷きに、何を抜き、何で香りを補い、炒め方をどう変えるかを整理します。

ターメリックを抜く — 黄色の正体は1つだけ

カレーの黄色は、ほぼターメリック1種類から来ています。アナンのバラッツは、ターメリックの役割を一言で覚えるなら「色」だと繰り返し説明します。

「カレーを作る時に、このターメリックの役割を何か一つ覚えるとしたら、色ですよと覚えておくといいです。この苦味のある香りプラス、これが入ることでカレー独特の色を作ってくれる」 — メタ・バラッツ

逆に言えば、ターメリックを入れなければ黄色は出ません。白いカレーの配合は、ここを外すところから始まります。ターメリックには香りのまとまりを作る働きもあるため、抜くと味のバランスが変わりますが、後述のホールスパイスとハーブで補います。

色のつかないスパイスだけで香りを組む

ターメリックを抜いても、パウダースパイスを普通に入れると色がついてしまいます。パンダラ・ラッサのレシピが特徴的なのは、仕上げのパウダースパイスがホワイトペッパーだけという点です。

「白いカレーって色をコントロールするには炒め方もあるんですけど、レシピで特徴的なのが、パウダースパイスがホワイトペッパーだけなんですね。コリアンダーシードだからコリアンダーパウダーでいいじゃないかとなると、また違ってくる。色という部分を見るとやはり違ってくる」 — メタ・バラッツ

ここがコツです。同じスパイスでも、ホールのまま使えば色は出にくく、パウダーにすると色が出やすくなります。コリアンダーシードを白ゴマ・ポピーシード・カシューナッツとともにホールでローストし、ペースト状にしてベースの香りとコクを作る。一方で、最後に振るパウダーは色の出ないホワイトペッパーに絞る。「色のつかないスパイスを選ぶ」という発想で組み替えます。

要素 普通のカレー 白いカレーの置き換え
色の土台 ターメリック(黄色) 抜く
仕上げパウダー コリアンダー・チリ等 ホワイトペッパーのみ
香り・コク パウダーで補う カシューナッツ・白ゴマ・ポピーシードをホールでロースト
辛味・爽やかさ レッドペッパー(赤) 青唐辛子・ししとう(緑)

赤を入れずに辛味を出す

辛味をレッドペッパーで足すと赤が入ります。色を抑えたいときは、辛味の供給源を緑系に変えるのが定石です。青唐辛子を使えば辛味が、ししとうや甘長唐辛子を使えば辛さを抑えた爽やかさが、いずれも色を濁さずに加わります。

「色がつかないようなスパイスを入れていくというのも手法ですね。例えばグリーンチリを使うとか、そういうのでもいいです」 — メタ・バラッツ

  • 辛いのが好きなら青唐辛子。パンダラ・ラッサでは2分の1本程度が目安。
  • 辛さを抑えて優しく仕上げたいならししとう5本程度に置き換える。
  • 香りづけのハーブも、カレーリーフや青唐辛子など緑のものなら色を足さずに風味が乗る。

炒めすぎない — 茶色は火加減から来る

配合を白くしても、玉ねぎとホールスパイスを炒めすぎると茶色くなります。白いカレーで最初に言われる注意事項が「炒めすぎない」ことです。

  • 玉ねぎ: いつもの強火で飴色にせず、中火〜弱火で透明感が出る程度にとどめる。表面を香ばしく焼き付ける普段のやり方は使わない。
  • ホールスパイス: ローストしすぎない。色が出る前の段階で止める。
  • 鶏肉: 表面が白いまま火を入れる。飴色にしない。

同じレシピでも、鍋やフライパンの厚さ、火加減のわずかな差で少し茶色くなります。バラッツ自身も「ホワイトチキンカレーと言いながら茶色いチキンカレーを作ったことがある」と話すほどで、味は変わりません。白く仕上げたいなら、各工程で色の変化を見ながら、ひとつ手前で次の食材を加えていくのがコツです。仕上げにココナッツミルクとヨーグルトが入ると、白さととろみが一段落ち着きます。

色も含めてカレーを設計する

白いカレーは特殊な裏技ではなく、「色をどうしたいか」から逆算する配合の一例です。バラッツは、カレーは色まで含めて作り手が決められるものだと言います。

「カレーは作りたいように自分で調整できる、好みに変えることができる。設計じゃないけどデザイン。色も含めてデザインできる、どういうカレーを作るか」 — メタ・バラッツ

どうやったら黄色くなるか、どうやったら白くなるか。色を起点に配合と炒め方を選ぶと、同じ材料でも違うカレーが組めます。白いカレーは、その引き出しを一つ増やす作り方です。

まとめ

  • カレーの黄色はほぼターメリック1種類。白くするなら、まずこれを抜く。
  • パウダーは色の出ないホワイトペッパーに絞り、香りとコクはカシューナッツ・白ゴマ・ポピーシード・コリアンダーシードをホールでローストして補う。
  • 辛味はレッドペッパー(赤)でなく青唐辛子やししとう(緑)で。色を濁さずに辛さや爽やかさを足せる。
  • 玉ねぎ・ホールスパイス・鶏肉を炒めすぎない。茶色は配合より火加減から来る。

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