第2部 あやつる 2.22
油・玉ねぎなしのキャンプカレー — 塩と水と骨の出汁で作る
油と玉ねぎを省き、スパイス・塩・水だけで作る簡略カレーの手順。南インドのウップチキンを下敷きに、油を入れず鶏を焼くコツ、塩小さじ2の理由、骨の出汁の活かし方、キャンプへの持ち出し方まで。

キャンプで油や玉ねぎを持ち出すのは正直めんどうです。クーラーボックスの場所も取るし、残った油の処理にも困る。実は、その油も玉ねぎも省いて、スパイスと塩と水だけでカレーは成立します。下敷きになるのは南インド・チェティナードの「ウップチキン」。ウップは現地の言葉で「塩」を指します。この記事では、油を入れずに作る具体的な手順と、塩・水・骨の出汁で旨味を立てるコツ、そして道具を最小限にしてキャンプへ持ち出す方法をまとめます。
油を入れず、スパイスと鶏をそのまま焼く
ふつうのカレーは「温めたフライパンに油を入れて」から始まります。この作り方では、その一行を丸ごと飛ばします。熱したフライパンに鶏肉・おろしにんにく・生姜・パウダースパイス・塩を直接入れ、油なしで焼いていく。スパイスを乾煎り(ロースト)するように香りを立てるのがねらいです。
「油をまず入れずに、スパイスをローストしていくように、鶏肉も油を入れずに焼いていく。入れてもできますけど、入れない方が香りが立ちやすいんです」 — メタ・バラッツ
仕上がりの香りも変わります。玉ねぎを炒めてトマトを煮詰める通常のベースだとスパイスのフレッシュ感が残るのに対し、油なしで焼くとソース全体に深みを帯びた香りがつく。バラッツ本人も「どうしてかは分からないけれど、比べると香りの出方がだいぶ違う」と言うほどです。
塩は小さじ2。少し強めにして旨味を引き出す
玉ねぎのコクを使わないぶん、味の軸は塩になります。4人前で通常は小さじ1.5のところ、このカレーは小さじ2と少し強め。塩を強めに入れることで、スパイスの香りと素材そのものの旨味がぐっと前に出ます。
- ターメリック小さじ1、コリアンダー小さじ2がパウダーの土台。辛さ以外のパウダーは多めでも破綻しにくい。
- 辛さの調整はレッドペッパーの量だけで行う。テンパリングの赤唐辛子は見た目ほど辛くならない(香りが主)。
- 味が濃く出るので、油っぽさがなくても物足りなさを感じにくい。屋台で熱いうちに食べるチキンカレーに近い味わいになります。
水400ccと骨つき肉で「出汁」を作る
油のコクの代わりになるのが、骨から出る出汁です。手羽元のように骨つきの部位を使い、弱火で蓋をして煮込むと、骨からだしのように味が出てソースに溶け込みます。
- パウダーと鶏を油なしで焼き、香りに深みが出たら水を半分(100〜200cc)入れてなじませる。
- 残りの肉と水(合計400cc)を加える。ぐつぐつしてきたら弱火にして蓋をする。
- 蓋をしないと水分が飛ぶので、その場合は水を足しながら、または最初から水を多めにして煮込む。
テンパリング前にスープだけ味見すると、それだけで飲めるほど。「この肉の旨味が骨からも出るから、骨つきの部位なら何でもいい」とバラッツ。鶏に限らず、魚など出汁が出る素材ほど向いています。玉ねぎもにんにく生姜も省いて、極限まで削ぎ落としても成立する作り方です。
薄いフライパンは焦げに注意
油がないぶん、鍋の厚みで火の通り方が変わります。分厚いフライパンなら中強火のままでも大丈夫ですが、薄いフライパンや鍋はそこにすぐ火が入って焦げやすい。乾いた状態でスパイスを焼くので、通常以上に火加減への気配りが要ります。
- 厚手の鍋・フライパン: 中強火でそのまま。
- 薄手・底の薄いもの: 火を弱め、動かしながら焼く。焦げるとスパイスが苦くなり、せっかくの香りが台無しになる。
キャンプへ持ち出すなら
この作り方は荷物が極端に減ります。油も玉ねぎも持っていかなくていいからです。
「にんにく生姜とパウダースパイス、塩を鶏肉でマリネしておけば、油はいらない。あとは水だけ。きれいな川が流れていたら、その水を使えばいい」 — メタ・バラッツ
- 下ごしらえは出発前に: 鶏肉におろしにんにく・生姜・パウダースパイス・塩をジップロックでマリネして持参。現地に着く頃には味がなじんでいる。
- ホールスパイス(テンパリング用)はドライで軽いので、これだけ別に持って行けば香りを足せる。玉ねぎがあればなお良いが、なくても味は覚えておけば判断できる。
- 応用編として、タンドリーチキンをレモン汁とともに漬け込んで持参し、焼いた後の余りでトマトソースを作ってバターチキンにする流れも。
まな板がなければ玉ねぎはフライパンの中で崩し、にんにく生姜はちぎって入れる。「カレーはワイルドに作るのがおいしい」というのがバラッツの持論です。
まとめ
- 油を入れずに鶏とスパイスをそのまま焼くと、ソース全体に深みのある香りがつく。
- 玉ねぎのコックを使わないぶん、塩は4人前で小さじ2と少し強めにして旨味を立てる。
- 手羽元など骨つき肉を水400ccで弱火・蓋つきで煮込み、骨の出汁で味を作る。出汁が出る素材ほど向く。
- 薄いフライパンは焦げやすいので火を弱める。キャンプには鶏をマリネ済みで持参し、油も玉ねぎも省く。

