第1部 つくる 1.10

もう一品と飲み物:副菜・チャイ・ラッシーで食卓にする

もう一品と飲み物:副菜・チャイ・ラッシーで食卓にする

カレーが1皿できると、次に思うのは「これだけでいいのかな」という気持ちです。あと一品、何か添えたい。でも、もう一品ぶんのカレーを作る元気はない。その答えが、副菜と飲み物です。インドでは、カレーのまわりに小さなお惣菜や、ヨーグルトの飲み物、甘いお茶が当たり前のように並びます。そして実は、これらはカレーよりずっと簡単に作れて、しかも今あるスパイスをそのまま使い回せるのです。この記事では、「カレー1皿を、ちゃんとした食卓一式にする」いちばん手前の一歩を、副菜・ラッシー・チャイの順にたどります。

目次7

なぜ「もう一品」から始めると上達するのか

スパイスを買ってみたものの、カレー以外で使う機会がなくて棚で眠っている。そんな経験はありませんか。アナンが副菜(サイドディッシュ)をおすすめするのは、味のためだけではありません。

「サイドディッシュを作れるようになると、その持っているスパイスなどが使い切れるようになる」(メタ・バラッツ)

ここが核心です。カレーは一度に使うスパイスの量が決まっていて、レシピも固定されがち。でも副菜は、あるスパイスで、その時にある食材を、パッと調理するもの。だから作れば作るほど、手持ちのスパイスの活用方法が自然と増えていきます。

副菜は「カレーより簡単」

もう一つ、見落とされがちな利点があります。

「やり方が分かれば、カレーより簡単に他のものに応用できるような気がします」(メタ・バラッツ)

カレーは、玉ねぎを炒め、ベースを作り、煮込んで……と工程が積み重なります。副菜はそこまで段取りが多くありません。野菜や豆をスパイスで和えたり炒めたりするだけ、というものも多い。だからこそ、スパイス使いの練習台としてちょうどいいのです。インドでは、さまざまな野菜や豆を使ったお惣菜のような料理を、家庭でたくさん作っています。その入口に立つのが、この記事のねらいです。

メインのカレーと「一緒に」作る

副菜は、献立として後から足すのではなく、メインのカレーを作りながら同時に仕込むと効率的です。鍋でカレーを煮込んでいる間に、もう一つのコンロで野菜を一品。これで食卓の景色が一気に変わります。季節の食材を取り入れれば、同じスパイスでも毎月ちがう一皿になります。

副菜の3つの型:和える・漬ける・炒める

副菜と一口に言っても、作り方でいくつかの型があります。難しく考えず、まずはこの3つの引き出しを持っておくと、目の前の食材に合わせて選べます。

  • 和える(ライタ・サラダ系)。ヨーグルトに野菜やスパイスを混ぜるだけ。火を使わないものも多く、いちばん手軽。
  • 漬ける(アチャール系)。野菜をスパイスと油で和えて、酸味や辛味のきいた常備菜にする。トマト、舞茸など、旬の素材で。
  • 炒める(ポリヤルなど)。野菜や豆をスパイスでさっと炒める。里芋・大根・白菜のような身近な野菜でも作れます。

ライタ=「ヨーグルトのサラダ」

最初の一品としていちばんおすすめなのがライタです。

「ライタっていうのは、ヨーグルトのサラダみたいなこと」(メタ・バラッツ)

つまり、ヨーグルトをベースに具材を合わせたもの。具の自由度が高く、決まった正解はありません。きゅうりのような定番もあれば、イチジクのような果物を使う変化球もあります。果物を使うときは、甘味と辛味、甘味と深みを掛け合わせる。甘いものにスパイスの辛味や深みを少し効かせると、ぐっと大人の味になります。辛いカレーの横に冷たいライタがあると、口の中がほっと休まる。この役割分担が、食卓を「一式」にしてくれます。

アチャール=辛味と酸味の常備菜

もう少し攻めた一品が欲しいときはアチャールです。旬のきのこ(舞茸など)やトマトを、スパイスと油で漬け込むように仕上げます。少量でもパンチがあるので、「辛味が欲しいな」というときに添えるだけで、淡白な料理が引き締まります。レモンライスのような軽い主食に、ヨーグルトとトマトのアチャールを少し添える、という食べ方もおすすめです。

飲み物で食卓にする:ラッシーとチャイ

副菜と並んで、食卓を完成させるのが飲み物です。とくにラッシーは、混ぜるだけで作れて、副菜と同じスパイスをそのまま使えます。

ラッシーは「混ぜるだけ」

スパイスラッシーの中身は、驚くほどシンプルです。

「(スパイスは)何が入っているかというと、コリアンダーとクミン、それだけです」(メタ・バラッツ)

ヨーグルトに、コリアンダーとクミン、塩、砂糖、牛乳を混ぜるだけ。火も使いません。甘さと塩け、そしてスパイスの香りのバランスを、自分の好みで調整できます。ターメリックやブラックペッパーなどを少し足してアレンジすることもできますが、まずは基本の組み合わせから始めれば十分です。

余ったヨーグルトと牛乳で

ラッシーの良いところは、冷蔵庫の余りものの受け皿になること。中途半端に残ったヨーグルトと牛乳を、おいしく使い切れます。塩味のソルトラッシーなら、目安は ヨーグルト100g・コリアンダーパウダー小さじ1・塩少々。ここに牛乳で濃度を調整します。甘いラッシーにしたいなら砂糖を加える。分量はあくまで出発点なので、味見しながら自分の一杯を見つけてください。

チャイは「全部入れて3回沸騰」

甘いお茶でしめたいときはチャイです。作り方の原則は、覚えやすい一言に集約できます。

「全ての材料を鍋に入れて、3回沸騰させるという」(メタ・バラッツ)

茶葉、水、牛乳、砂糖、そしてスパイス。これらを最初から全部鍋に入れ、3回沸騰させる。沸いては落ち着き、また沸かす。これを3回くり返すことで、茶葉とスパイスの香りがしっかり引き出され、ミルクと一体になります。難しい火加減のコツより、この「3回」というリズムを守るだけで、安定しておいしいチャイになります。

作ってみる:食卓を一式にする手順

献立として組み立てるときの、いちばんやさしい流れです。

  1. メインのカレーを煮込み始める。 いつものスパイスカレーを、いつも通り火にかける。
  2. 煮込みの間に副菜を1品。 火を使わないライタなら、ヨーグルトに具とスパイスを和えるだけ。攻めたいならアチャールを1品。
  3. 飲み物を仕込む。 ラッシーはヨーグルト+コリアンダー+クミン+塩+砂糖+牛乳を混ぜるだけ。チャイなら全材料を鍋で3回沸騰。
  4. 同じスパイスを使い回す。 カレーで使ったコリアンダーやクミンを、副菜とラッシーにもそのまま。これで棚のスパイスが回り始める。
  5. 盛り合わせる。 カレー・副菜・飲み物を並べれば、もう立派な「食卓一式」です。

応用:身近な食材で広げる

慣れてきたら、インドの食材にこだわる必要はありません。今、家にある野菜で十分です。

  • 里芋・大根・白菜などを、スパイスでさっと炒めて副菜に。甘い大根がスパイスに絡むと、それだけでごはんが進みます。
  • フィッシュフライのような揚げ物も、魚にこだわらず手元の素材で。スパイスをまとわせるだけで一品になります。
  • レモンライスに、ヨーグルトやトマトのアチャールを添える。主食と副菜を一皿で楽しむ食べ方です。

大切なのは、「カレー専用」だと思っていたスパイスを、日常の調理にひと振りする習慣をつけること。副菜を一品作るたびに、スパイスとの距離が縮まっていきます。

まとめ

  • 副菜はカレーより簡単で、手持ちのスパイスを使い切れる上達の近道です。
  • 副菜の引き出しは和える・漬ける・炒めるの3つです。最初はライタが手軽です。
  • ラッシーは混ぜるだけ、チャイは全材料を入れて3回沸騰させるだけです。
  • メインと同時に仕込み、同じスパイスを使い回せば無理なく食卓一式になります。

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よくある質問

Q.ライタとは何ですか?
A.ヨーグルトのサラダのような料理です。ヨーグルトをベースに具材を合わせたもので、火を使わず和えるだけで作れるものも多く、最初の副菜としていちばん手軽です。きゅうりのような定番から、イチジクなど果物を使う変化球まで具の自由度が高く、辛いカレーの横に冷たいライタがあると口の中がほっと休まる役割も果たします。
Q.チャイの作り方の基本は何ですか?
A.茶葉・水・牛乳・砂糖・スパイスを最初から全部鍋に入れて、3回沸騰させるのが基本です。沸いては落ち着き、また沸かすを3回くり返すことで、茶葉とスパイスの香りがしっかり引き出され、ミルクと一体になります。難しい火加減のコツより、この「3回」というリズムを守るだけで安定しておいしく作れます。
Q.ラッシーにはどんなスパイスを入れますか?
A.基本はコリアンダーとクミンの2つだけです。ヨーグルトにコリアンダー、クミン、塩、砂糖、牛乳を混ぜるだけで、火も使いません。塩味のソルトラッシーなら、ヨーグルト100gにコリアンダーパウダー小さじ1と塩少々を合わせ、牛乳で濃度を調整するのが目安です。ターメリックやブラックペッパーを少し足すアレンジもできます。
Q.カレーに合う簡単な副菜には何がありますか?
A.作り方で分けると「和える(ライタ・サラダ系)」「漬ける(アチャール系)」「炒める(ポリヤルなど)」の3つの型があります。ヨーグルトに具とスパイスを混ぜる和え物がいちばん手軽で、旬のきのこやトマトをスパイスと油で漬けるアチャール、里芋・大根・白菜など身近な野菜のスパイス炒めも立派な副菜になります。
Q.副菜を作るとスパイス使いが上達するのはなぜですか?
A.手持ちのスパイスを使い切れるようになるからです。カレーは一度に使うスパイスの量が決まっていてレシピも固定されがちですが、副菜はあるスパイスで、その時にある食材をパッと調理するもの。作るほど活用方法が自然と増えます。しかも副菜はカレーほど工程が多くないので、スパイス使いの練習台にちょうどいい存在です。
Q.副菜や飲み物はいつ仕込むのが効率的ですか?
A.メインのカレーを煮込んでいる間に同時に仕込むのが効率的です。煮込み中にもう一つのコンロで、火を使わないライタやアチャールを一品用意し、混ぜるだけのラッシーや鍋で沸かすチャイも仕込めば、カレー・副菜・飲み物のそろった食卓一式になります。カレーで使ったコリアンダーやクミンをそのまま使い回せるのも利点です。