第1部 つくる 1.10

もう一品と飲み物 — 副菜・チャイ・ラッシーで食卓にする

もう一品と飲み物 — 副菜・チャイ・ラッシーで食卓にする

カレーが1皿できると、次に思うのは「これだけでいいのかな」という気持ちです。あと一品、何か添えたい。でも、もう一品ぶんのカレーを作る元気はない——。その答えが、副菜と飲み物です。インドでは、カレーのまわりに小さなお惣菜や、ヨーグルトの飲み物、甘いお茶が当たり前のように並びます。そして実は、これらはカレーよりずっと簡単に作れて、しかも今あるスパイスをそのまま使い回せるのです。この記事では、「カレー1皿を、ちゃんとした食卓一式にする」いちばん手前の一歩を、副菜・ラッシー・チャイの順にたどります。

なぜ「もう一品」から始めると上達するのか

スパイスを買ってみたものの、カレー以外で使う機会がなくて棚で眠っている——そんな経験はありませんか。アナンが副菜(サイドディッシュ)をおすすめするのは、味のためだけではありません。

「サイドディッシュを作れるようになると、その持っているスパイスなどが使い切れるようになる」 — メタ・バラッツ

ここが核心です。カレーは一度に使うスパイスの量が決まっていて、レシピも固定されがち。でも副菜は、あるスパイスで、その時にある食材を、パッと調理するもの。だから作れば作るほど、手持ちのスパイスの活用方法が自然と増えていきます。

副菜は「カレーより簡単」

もう一つ、見落とされがちな利点があります。

「やり方が分かれば、カレーより簡単に他のものに応用できるような気がします」 — メタ・バラッツ

カレーは、玉ねぎを炒め、ベースを作り、煮込んで……と工程が積み重なります。副菜はそこまで段取りが多くありません。野菜や豆をスパイスで和えたり炒めたりするだけ、というものも多い。だからこそ、スパイス使いの練習台としてちょうどいいのです。インドでは、さまざまな野菜や豆を使ったお惣菜のような料理を、家庭でたくさん作っています。その入口に立つのが、この記事のねらいです。

メインのカレーと「一緒に」作る

副菜は、献立として後から足すのではなく、メインのカレーを作りながら同時に仕込むと効率的です。鍋でカレーを煮込んでいる間に、もう一つのコンロで野菜を一品。これで食卓の景色が一気に変わります。季節の食材を取り入れれば、同じスパイスでも毎月ちがう一皿になります。

副菜の3つの型 — 和える・漬ける・炒める

副菜と一口に言っても、作り方でいくつかの型があります。難しく考えず、まずはこの3つの引き出しを持っておくと、目の前の食材に合わせて選べます。

  • 和える(ライタ・サラダ系) — ヨーグルトに野菜やスパイスを混ぜるだけ。火を使わないものも多く、いちばん手軽。
  • 漬ける(アチャール系) — 野菜をスパイスと油で和えて、酸味や辛味のきいた常備菜にする。トマト、舞茸など、旬の素材で。
  • 炒める(ポリヤルなど) — 野菜や豆をスパイスでさっと炒める。里芋・大根・白菜のような身近な野菜でも作れます。

ライタ=「ヨーグルトのサラダ」

最初の一品としていちばんおすすめなのがライタです。

「ライタっていうのは、ヨーグルトのサラダみたいなこと」 — メタ・バラッツ

つまり、ヨーグルトをベースに具材を合わせたもの。具の自由度が高く、決まった正解はありません。きゅうりのような定番もあれば、イチジクのような果物を使う変化球もあります。果物を使うときは、甘味と辛味、甘味と深みを掛け合わせる——甘いものにスパイスの辛味や深みを少し効かせると、ぐっと大人の味になります。辛いカレーの横に冷たいライタがあると、口の中がほっと休まる。この役割分担が、食卓を「一式」にしてくれます。

アチャール=辛味と酸味の常備菜

もう少し攻めた一品が欲しいときはアチャールです。旬のきのこ(舞茸など)やトマトを、スパイスと油で漬け込むように仕上げます。少量でもパンチがあるので、「辛味が欲しいな」というときに添えるだけで、淡白な料理が引き締まります。レモンライスのような軽い主食に、ヨーグルトとトマトのアチャールを少し添える、という食べ方もおすすめです。

飲み物で食卓にする — ラッシーとチャイ

副菜と並んで、食卓を完成させるのが飲み物です。とくにラッシーは、混ぜるだけで作れて、副菜と同じスパイスをそのまま使えます。

ラッシーは「混ぜるだけ」

スパイスラッシーの中身は、驚くほどシンプルです。

「(スパイスは)何が入っているかというと、コリアンダーとクミン、それだけです」 — メタ・バラッツ

ヨーグルトに、コリアンダーとクミン、塩、砂糖、牛乳を混ぜるだけ。火も使いません。甘さと塩け、そしてスパイスの香りのバランスを、自分の好みで調整できます。ターメリックやブラックペッパーなどを少し足してアレンジすることもできますが、まずは基本の組み合わせから始めれば十分です。

余ったヨーグルトと牛乳で

ラッシーの良いところは、冷蔵庫の余りものの受け皿になること。中途半端に残ったヨーグルトと牛乳を、おいしく使い切れます。塩味のソルトラッシーなら、目安は ヨーグルト100g・コリアンダーパウダー小さじ1・塩少々。ここに牛乳で濃度を調整します。甘いラッシーにしたいなら砂糖を加える。分量はあくまで出発点なので、味見しながら自分の一杯を見つけてください。

チャイは「全部入れて3回沸騰」

甘いお茶でしめたいときはチャイです。作り方の原則は、覚えやすい一言に集約できます。

「全ての材料を鍋に入れて、3回沸騰させるという」 — メタ・バラッツ

茶葉、水、牛乳、砂糖、そしてスパイス——これらを最初から全部鍋に入れ、3回沸騰させる。沸いては落ち着き、また沸かす。これを3回くり返すことで、茶葉とスパイスの香りがしっかり引き出され、ミルクと一体になります。難しい火加減のコツより、この「3回」というリズムを守るだけで、安定しておいしいチャイになります。

作ってみる — 食卓を一式にする手順

献立として組み立てるときの、いちばんやさしい流れです。

  1. メインのカレーを煮込み始める。 いつものスパイスカレーを、いつも通り火にかける。
  2. 煮込みの間に副菜を1品。 火を使わないライタなら、ヨーグルトに具とスパイスを和えるだけ。攻めたいならアチャールを1品。
  3. 飲み物を仕込む。 ラッシーはヨーグルト+コリアンダー+クミン+塩+砂糖+牛乳を混ぜるだけ。チャイなら全材料を鍋で3回沸騰。
  4. 同じスパイスを使い回す。 カレーで使ったコリアンダーやクミンを、副菜とラッシーにもそのまま。これで棚のスパイスが回り始める。
  5. 盛り合わせる。 カレー・副菜・飲み物を並べれば、もう立派な「食卓一式」です。

応用 — 身近な食材で広げる

慣れてきたら、インドの食材にこだわる必要はありません。今、家にある野菜で十分です。

  • 里芋・大根・白菜などを、スパイスでさっと炒めて副菜に。甘い大根がスパイスに絡むと、それだけでごはんが進みます。
  • フィッシュフライのような揚げ物も、魚にこだわらず手元の素材で。スパイスをまとわせるだけで一品になります。
  • レモンライスに、ヨーグルトやトマトのアチャールを添える。主食と副菜を一皿で楽しむ食べ方です。

大切なのは、「カレー専用」だと思っていたスパイスを、日常の調理にひと振りする習慣をつけること。副菜を一品作るたびに、スパイスとの距離が縮まっていきます。

まとめ

  • 副菜はカレーより簡単で、しかも手持ちのスパイスを使い切れる。上達の近道。
  • 副菜の引き出しは3つ:和える(ライタ)・漬ける(アチャール)・炒める(ポリヤル)。最初はライタが手軽。
  • ライタ=ヨーグルトのサラダ。甘味×辛味、甘味×深みを掛け合わせると味が決まる。
  • ラッシーは混ぜるだけ。ヨーグルト+コリアンダー+クミン+塩+砂糖+牛乳。余ったヨーグルトと牛乳の受け皿にも。
  • チャイは全材料を鍋に入れて3回沸騰。このリズムを守るだけで安定する。
  • メインのカレーと同時に仕込み、同じスパイスを使い回せば、無理なく「食卓一式」になる。

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