完全ガイド
チャイ完全ガイド — 煮出しでつくる、インドのミルクティー
鍋ひとつ、沸騰3回。祖母から3世代に伝わる淹れ方のコツから、スパイスの実数、茶葉の選び方(CTCという正解)、アレンジ9品まで。チャイの完全ガイドです。

チャイは、茶葉を水から煮出して、ミルクとスパイスで仕立てるインドのミルクティーです。ポットで蒸らす紅茶とは根本から製法が違い、濃く出した茶葉の力強さを、ミルクの甘さとスパイスの香りが受け止める。インドの路上で、家庭で、一日に何杯も飲まれている国民的な飲み物です。
このページは、アナンのチャイに関するすべての入口です。店主のメタ・バラッツにとって、チャイはただの商品ではありません。少年時代、鎌倉の玄関先で淹れた一杯が今のアナンの原点です(物語は後半で)。月に一度のオンライン料理教室で語られてきた淹れ方のコツ、スパイスの実数、茶葉の選び方、アレンジ9品まで、一枚の地図にまとめました。
チャイとは — マサラチャイとの違いから
インドで「チャイ」は本来ただの「お茶」のこと。日本で親しまれているスパイス入りのミルクティーは、正確にはマサラチャイ(スパイス入りのチャイ)です。とはいえ日本では「チャイ=あの甘くスパイシーなミルクティー」で通じるので、このページでも広い意味で使います。ちなみにインドでは紅茶もコーヒーも「デフォルトでミルク入り」。バラッツが学生時代を過ごした寄宿学校の食堂にも、ストレートのお茶はほとんどありませんでした。
- 本質は「煮出し」……ポットで3分蒸らす紅茶と違い、チャイは鍋で水から煮出します。渋みごと濃く引き出した茶葉に、ミルクと甘みをぶつけてバランスを取る設計です。
- 一杯ごとに個性がある……カルダモン一粒だけの家もあれば、ハーブを束で入れる店もある。「路上で売っているチャイの人たちの一つ一つの味は結構オリジナル」で、それこそが面白さ。配合の考え方はチャイのブレンド設計で読めます。
- インドの暮らしの真ん中にある……夜行列車には「チャイ、チャイー!」の売り声が響き、南インドに入るとそれが「チャイ、コーピー!」に変わる(南はコーヒー圏)。路上のチャイ屋から家庭の台所まで、背景はチャイとインドの飲み物文化へ。
基本の淹れ方 — 鍋ひとつ、沸騰3回
教科書はマサラチャイのレシピ。道具は鍋と茶こしだけ、工程はこれだけです。5分で作りたい日は世界で1番簡単なチャイもどうぞ。
おいしさの分かれ目は「沸騰を3回繰り返す」こと。泡がふくれて鍋の口までせり上がったら火を止め、落ち着いたらまた沸かす。これで茶葉とミルクとスパイスの味が馴染みます。なぜ3回か。バラッツはこう明かしています。
うちのおばあさんがそう言ってたんです。「3回やりなさい、美味しくなる」。おまじないみたいなものだけど、その方が断然美味しいんです、本当に。(バラッツ、料理教室の実況より)
覚えておきたい目安と原則は4つ。①水:牛乳=1:1が基本形で、寒くなるほどミルクを増やすと美味しい。②茶葉は1カップに茶さじ1、カルダモンなら1カップに1粒で十分(実はバラッツのチャイは「路上で入れるから茶葉も少なめ、水も多め。それが美味しい」という屋台基準)。③順番は気にしなくていい。全材料を最初から鍋に入れて3回沸騰、がバラッツの正式手順です。④豆乳などの植物性ミルクは煮出さないこと。分離するので、水+茶葉+スパイスだけ煮出して漉し、後から合わせます。吹きこぼれだけはご注意を。泡がふくらんだら火を止める、を守れば大丈夫です。
チャイのスパイス — 9品の配合を数えてみた
アナンのチャイレシピ9品で、実際に何が使われているかを数えました。カルダモンは9品すべてに登場。「スパイス界の女王」は全員一致の主役です。続いてシナモンとクローブが8品ずつで、この3つが実質の柱。その先は選択枠で、ブラックペッパーが5品、ジンジャーが4品、ミント・フェンネル・スターアニスが続きます。
使い方のコツは2つ。ホールは莢や粒を軽くつぶして水から煮出すこと。そして仕上げに、煮出しに使ったスパイスのパウダーをほんのひと振り足すと、湯気と一緒に香りが立ち上がる二段構えになります。グジャラートの家庭ではここにレモングラスやミントを足すのが定番で、「レモングラスなんか合うのかな」と言う人も、一口飲めば意識が変わります。




茶葉の選び方 — チャイにはCTCという正解
チャイに向くのは、粒状に丸められたアッサムCTC。CTCとは製法の名前で、Crush(叩く)・Tear(ちぎる)・Curl(丸める)の頭文字です。バラッツの説明が一番わかりやすいので、そのまま引きます。
叩いて、ちぎって、丸める。散々な目にあった茶葉。なんでそんな散々な目に合わせるかというと、濃く出るから。濃く出た時に牛乳で割ると紅茶の味が分かりやすいんです。(バラッツ、料理教室の実況より)
リーフの繊細さを楽しむ紅茶とは役割が違います。チャイを淹れるなら、まずCTCを選べば間違いありません。慣れてきたら茶葉を替えるのも一興です。ほうじ茶なら香ばしく、緑茶なら苦味を爽やかに。茶葉に合わせてスパイスの構成を変えるのがアナン流のアレンジ設計です。






どのチャイから? — 9品の楽しみ方
まずは基本
体を温める・和と合わせる
夜に、遊びに




アナンとチャイ — 玄関先の一杯から
バラッツは、自分のスパイス人生の始まりをこう書いています。
私のスパイスライフにとってのビッグバンは近所のおばさんが毎日玄関先まで来てチャイを飲んでくれたことである。その人が私の入れたチャイが美味しいと言ってくれたのが私のスパイスライフのビッグバン。
小学生の頃、来客にチャイを淹れるのが彼の役目でした。アッサムのCTCにアナンのスパイスミックス、スペアミントを2、3枚、砂糖は三温糖。このミントチャイのレシピは父から習い、父はその両親から習った、3世代のレシピです。スパイス売りを始めた頃には、稲村ヶ崎の食堂で月に一度の「移動チャイ屋」を開いていて、いまの料理教室もオリジナルブレンドも、そこから始まりました。
ルーツの地・グジャラート州は、インドでも珍しい禁酒の州。「飲みに行こうよ」の誘いがビールではなくチャイになる土地で、各家庭・各店が競うようにチャイの味を磨いてきました。ジンジャーのピリ辛、カルダモンの爽やか、レモングラスやミントのハーブチャイ。アナンのチャイの棚は、この文化の直輸入です。世界には他にも、練乳で作るハイデラバードの濃厚なイラニチャイ、コルカタの深夜食堂で仕上げにサフランを浮かべる一杯など、土地の数だけチャイがあります。
よくある質問
- チャイとはどんな飲み物?……茶葉を水から煮出し、ミルクと甘み、多くの場合スパイスを合わせたインドのミルクティーです。ポットで蒸らす紅茶と違い「煮出す」のが本質で、濃い茶葉にミルクの甘さとスパイスの香りを重ねます。
- チャイとマサラチャイの違いは?……インドでチャイは本来「お茶」全般のこと。スパイス入りのものを区別してマサラチャイと呼びます。日本で「チャイ」といえば、ほぼマサラチャイを指しています。
- 茶葉は何を使えばいい?……粒状のアッサムCTCがおすすめです。叩いて・ちぎって・丸める製法で短時間で濃く出るように作られていて、ミルクに負けない強さが出ます。ほうじ茶や緑茶でも作れますが、その場合は茶葉に合わせてスパイスの構成を変えるのがコツです。
- ミルクと水の比率は?……基本は水:牛乳=1:1。寒い時期はミルクの割合を増やすと美味しくなります。順番は気にせず、全材料を鍋に入れて「沸騰を3回繰り返す」のがバラッツの教える手順です。
- なぜ沸騰を3回繰り返すの?……茶葉・ミルク・スパイスの味が馴染むからです。泡がふくれ上がったら火を止め、落ち着いたらまた沸かすを3回。バラッツの祖母から伝わる「3回やりなさい、美味しくなる」の教えで、一度で済ませたものとは味が違います。最後に蓋をして1分蒸らすとさらにまとまります。
- 豆乳やオーツミルクでも作れる?……作れますが、煮出すと分離しやすいので手順を変えます。水+茶葉+スパイス+砂糖だけを煮出して漉し、温めた植物性ミルクと後から合わせてください。
- 砂糖は入れるべき?……本場のチャイはしっかり甘いのが標準で、甘みが渋みと香りをまとめる役割を持ちます。まずは1カップに小さじ1〜2で試して、好みで調整を。黒糖やジャグリー(インドの含蜜糖)を使うとコクが出ます。
- カフェインが気になる時は?……ルイボスで作るチャイなら、ノンカフェインで寝る前でも安心です。ルイボスジンジャーチャイのブレンドは、お客さまのリクエストに応えて数ヶ月の試作を経て生まれました。










