完全ガイド
サグカレー完全ガイド — 青菜のカレーの作り方と、パラックパニールとの違い
サグは「青い葉っぱ」。ほうれん草のパラックパニールを教科書に、ペーストの作り方、苦味の扱い、季節の青菜の選び方、パニールの作り方、16品の材料表の実数まで、月に一度の料理教室の実技からまとめた完全ガイドです。

サグカレーは、青菜をたっぷり使うインドのカレーです。サグは「青い葉っぱ」の意味で、ほうれん草、からし菜、菜の花、春菊と、葉の選び方で味が変わります。ほうれん草とチーズのパラックパニールも、この仲間です。
このページは、アナンのサグカレーとパラックパニールに関するすべての入口です。店主のメタ・バラッツは月に一度のオンライン料理教室を開いていて、その実技と、全16品のレシピ、材料表の実数を一枚の地図にまとめました。
サグカレーとは — 青菜のカレー、もとはからし菜
サグっていうのは青い葉っぱっていう意味なので、もともとはからし菜がよく使われていて、ツンとした感じとか苦味があるようなものが多いんですね。(バラッツ、料理教室の実況より)
からし菜が始まりという話は、バラッツも「その辺は定かではないですけど」と断って話します。起点を東インドに置く回もあれば、パンジャーブに置く回もあります。はっきりしているのは今の姿で、インドでも人気なのはほうれん草です。
- サグとパラックの違い……サグは青菜全般、パラックはほうれん草そのものを指します。
- サグパニールとパラックパニールの違い……青菜とパニール(カッテージチーズ)のカレーがサグパニール。ほうれん草で作ればパラックパニールです。
- 北と東の違い……主食が小麦の北は、ほうれん草と乳製品でクリーミーに。主食が米の東は、マスタードを効かせて、ご飯に合うあっさりした味に。
- ほうれん草が広がった理由……ほうれん草の甘さが、北インドのギーやバターとよく合ったから、とバラッツは説明します。
基本の作り方 — ペーストを作って、最後に合わせる
教科書はパラックパニールです。基本のスパイスだけで作れます。ほうれん草のペーストを先に作り、玉ねぎとトマトのカレーの土台に合わせます。工程はその実写真です。
実数はこうです。ほうれん草約500gを茹でて、水約200mlでペーストに。油大さじ1にクミン(ホール)小さじ1、玉ねぎ1個、にんにくと生姜のおろし各大さじ1、トマト1個。パウダーはコリアンダー小さじ2、クミン小さじ1、レッドペッパー小さじ1/2、ターメリック小さじ1/4と塩。湯200mlで伸ばし、ペーストを加え、生クリーム大さじ2とパニールで仕上げます。
大事なのは、ペーストを合わせたあとに煮すぎないことです。目指す色は若葉の緑です。
やりすぎない方がいい、そうするとほうれん草が今度黒くなって苦味みたいな強くなるんですね。(バラッツ、料理教室の実況より)
塩は少し多めに考えます。ヨーグルト、トマト、生クリーム、ほうれん草が入ってとろみが出ると、塩を弱く感じるからです。バラッツは同じ小さじ1.5でも「ちょっと物足りなさが出るかもしれない」と言います。最後に味を見て調整してください。
もっと手軽な入口もあります。基本のカレーを水で伸ばす代わりに、茹でたほうれん草のペーストで伸ばす方法です。チーズや生クリームは、そこに足していけば十分です。
ペーストの設計 — 茹でるか、炒めるか
レシピ16品のうち12品が、工程のどこかで青菜をペーストにします。作り方は大きく二つあります。
- 茹でてペーストにする……パラックパニール、サグチキン、ニルギリキーマなど。青菜の色と味を、そのまま土台に足す作り方です。
- 炒めてからペーストにする……菜の花入りのサグチキン、秋鮭と春菊のカレーなど。玉ねぎやトマトと一緒に炒めて、水と一緒にミキサーへ。
どちらが上という話ではありません。炒めてからまとめる理由を、バラッツはこう説明します。
別々にペーストにして入れてもいいです。いろいろなやり方があります。これが結構統一化、全体の味のおいしさがより出るんじゃないかなということで、私はこうしております。(バラッツ、料理教室の実況より)
粒の細かさでも味は変わります。粗めにすると繊維が残り、なめらかにすると緑がきれいに出ます。とろみが変わると塩の感じ方も変わるので、塩はペーストを合わせてから決めます。緑がきれいに出なかったという参加者の声にも、バラッツの答えはミキサー次第、でした。
ミキサーがなくても作れます。葉をよく刻んで炒めれば、そのままソースになります。
ソースが均等の色じゃなくなるけど味は比較的近い、全く一緒ではないですよ、もちろんね。(バラッツ、料理教室の実況より)
春菊のように柔らかい葉なら、強いミキサーでなくても回ります。あえて刻む選択もあって、バラッツは緑のペーストを見せたい日はミキサー、菜の花キーマのように葉を感じたい日は刻む、と使い分けます。
食べる時間がずれるときは、ほうれん草を合わせる前のカレーの段階で止めておきます。レストランでもよく使う手順です。
食べる前に一番いいのはその食べる人の分だけほうれん草を茹でていただいて、あの手間だけやっていただく、加えるのが一番いいですね。(バラッツ、料理教室の実況より)
苦味の設計 — 消すか、生かすか
青菜のカレーの味は、苦味をどう扱うかで決まります。バラッツの料理教室には四つのやり方が出てきます。
- そのまま生かす……ニルギリキーマは、苦味とスパイスの深みを主役にしたカレーです。
- 青唐辛子を重ねる……「このほうれん草の苦味とかスパイスの深みと重なって、程よくなりますね」。
- 生姜で釣り合わせる……下の引用の通りです。仕上げの千切りも、何度も勧めています。
- 乳製品で丸くする……生クリームやヨーグルトでまろやかにします。北インドの型です。
少しした苦みに生姜の爽やかさがちょうどバランスを取ってくれるんじゃないかなと。(バラッツ、料理教室の実況より)
レストランの味に近づけるなら、生クリームを先に煮詰めます。サグチキンはフライパンを二つ使い、片方で鶏のカレーを煮て、もう片方で油にクミン(ホール)とにんにくの香りを移し、生クリームを煮詰めてからほうれん草のペーストを加えます。それを鶏の鍋に合わせて、軽く煮たら完成です。普段は最後に足すことが多い生クリームを先に煮詰めるのが、この作り方の要点です。
仕上げはカスーリメティ(乾燥フェヌグリークの葉)です。フライパンで乾煎りして、手で揉んで粉にし、最後に加えます。ローストすると苦味のある香りが甘い香りに変わり、バラッツは「メイプルのよう」と言います。この一手間についての評価はこうです。
やるかやらないかでもちょっと違う、だいぶ違いますね。(バラッツ、料理教室の実況より)
東インドの型では、苦味の相棒がマスタードになります。パウダー、シード、オイルの3層で重ねて、「辛い刺激ではなくて、ツンとした刺激」を作ります。ここに砂糖と塩を合わせるのが、菜の花入りのサグチキンの組み立てです。カスーリメティの使い方はカスーリメティの解説で詳しく読めます。
青菜の選び方 — 季節の葉で作る
これがですね、春菊に変わっても、小松菜に変わっても、プラス、スパイスを少しアレンジしたり、具材を変えていくことによって、無限にこういろんなカレーができていくんですね。(バラッツ、料理教室の実況より)
青菜のカレーは、日本の八百屋と相性がいい料理です。料理教室で実際に使ってきた葉を並べます。
- ほうれん草……甘く、乳製品に合います。ほうれん草だけで作ってもおいしい、がバラッツの答えです。
- 春菊……10月から11月の料理教室で登場します。独特のくせがあり、ディルを合わせると魚にも合います。
- 小松菜……10月の料理教室で、バラッツが今の時期ならと挙げた葉です。チョッチョリにも使います。
- 菜の花……2月から4月の葉です。ほうれん草と1束ずつ合わせたサグチキンがあります。
- からし菜……本来の組み合わせです。ツンとした香りはマスタードオイルと合います。
- クレソン、ルッコラ……菜の花の代わりとして、東インド型の魚のカレーで名前が挙がった葉です。
具材も自由です。鶏のほか、鮭やメカジキなどの魚、豚、牛、合いびき肉。インドでこのカレーによく使うのはマトンで、バラッツはマトンやヤギで作るときは青唐辛子を1本増やします。キャベツやレタスは、料理教室でもイメージが違うという話になりました。葉の濃い野菜を選んでください。
パニール — 牛乳とレモンで作るチーズ
1リットルに対して大体40mlの酸味、酸が欲しいんです。酸が入ることによって分離する。だから例えばレモンがない場合はお酢でもいい。(バラッツ、料理教室の実況より)
パニールのレシピは牛乳1リットル、レモン汁40ml、塩少々、カルダモン3粒です。牛乳を沸かして弱火にし、レモン汁と塩を加えて分離させ、布で漉して重しをのせ、冷蔵庫で約30分。出来上がりは意外と少なく、残るホエーのほうが多くなります。ホエーはチャパティを練る水に使えます。
固さは水の切り方で変わります。ホロホロのものはサグカレーにそのままかけられて、一晩冷蔵庫で固めれば四角く切れます。カレーより先に作って置いておくのが、バラッツの勧める段取りです。
ただ、材料表で数えるとパニールが入るのは16品中1品です。サグカレーの具は鶏が多く、パニールは数ある選択肢のひとつです。絞り加減や焼き方はパニールの解説にまとまっています。
レシピ全16品 — 葉と型で選ぶ
アナンの青菜のカレーは16品です。材料表で最も多い葉はほうれん草で10品。ペーストにするものが12品、刻んだまま使うものが4品あります。
ほうれん草とクリーム — 北インドの型
乳製品でまろやかに仕上げる、いちばん知られた形です。最初の一皿はここから。






からし菜と菜の花 — ツンとした苦味
マスタードと青菜の苦味を組み合わせる東の味です。ご飯によく合います。
ニルギリ — 南インドの山の緑
ニルギリは南インドの高原で、ほうれん草の名物カレーがあります。パクチーと白ごまを合わせた、苦味を生かす型です。
キーマ、豆、お粥 — カレーの外へ
葉を刻んで混ぜる料理や、豆やお米と合わせる料理です。ミキサーを出したくない日にも。
材料の設計図 — 16品の材料表を数えてみた
16品で実際に使われている材料を数えました。葉はほうれん草10品、菜の花2品、春菊2品、小松菜1品、からし菜1品で、「青菜」とだけ書いたものが1品です。土台はトマト15品、玉ねぎ14品。青唐辛子は8品に入ります。乳製品は生クリーム6品、ヨーグルト6品、ギー5品で、マスタードオイルは3品です。
スパイスはターメリックとコリアンダー(パウダー)が各15品、レッドペッパー10品、クミン(ホール)9品。特徴が出るのは次の層で、カスーリメティ6品、マスタード(パウダーかホール)6品、カルダモン(ホール)5品、フェネグリーク(ホール)5品、パンチフォロン3品です。






サグカレーの物語 — パンジャーブの窯と、夜の汽車
バラッツの旅の記憶に残る味のひとつが、北インド・パンジャーブ州アムリットサルで食べたサルソン・カ・サーグです。からし菜のカレーを、トウモロコシ粉のパン(マキキロティ)と一緒に食べる料理です。
そのパンジャーブのカレーがなぜ世界に広がったのか。バラッツは、シク教の共同窯に理由を見ています。窯を分け合うことで、家ごとの作り方が人の目に触れるようになったという見立てです。
家庭で眠っていたレシピや作り方っていうのがオープンになっている。オープンになったからこそ刺激しあって、よりおいしいものがどんどんどんどん出来上がってきた。(バラッツ、料理教室の実況より)
その先にタンドリーチキン、バターチキン、ほうれん草のカレーがある、というのがバラッツの考えです。本人も「そうじゃないかもしれない」と留保をつけています。背景は北インドの食で読めます。
パニールには個人的な思い出があります。子どもの頃のバラッツが世話になったムンバイのシク教徒の大家族は、パンジャーブで夜中に作られたパニールを汽車で受け取っていました。翌朝、ムンバイの駅へ取りに行くのです。
パニールだけがそのパンジャーブ、北インドからずーっとムンバイまでやってくる。(バラッツ、料理教室の実況より)
今まで食べた中で一番おいしいパニールだった、とバラッツは言います。作りたてがおいしいチーズなので、家で作る価値があります。
このシリーズの完全ガイド: ビリヤニ・キーマカレー・チャイ・アチャール・タンドリーチキン・バターチキン・ダール・サブジ・ラッサムもどうぞ。
よくある質問
- Q.サグカレーとはどんな料理?
- A.青菜をたっぷり使うインドのカレーです。サグは「青い葉っぱ」の意味で、もともとはからし菜で作られていたと言われます。今のインドで人気なのはほうれん草で、青菜をペーストにしてカレーの土台に合わせる作り方が代表的です。
- Q.サグパニールとパラックパニールの違いは?
- A.サグは青菜全般、パラックはほうれん草を指します。青菜とパニールのカレーがサグパニールで、ほうれん草で作ればパラックパニールです。アナンのレシピはほうれん草を使うので、パラックパニールと呼んでいます。
- Q.ほうれん草は茹でる?生のまま炒める?
- A.どちらでも作れます。茹でてペーストにすると緑の色がそのまま土台に乗ります。玉ねぎやトマトと一緒に炒めてからペーストにすると、全体の味がまとまります。バラッツはレシピごとに両方を使っています。
- Q.色が黒ずみました。苦味も強いです。
- A.ペーストを合わせたあとに煮すぎた可能性が高いです。煮すぎるとほうれん草が黒くなり、苦味が強くなります。合わせたら軽く煮て、すぐに食べてください。きれいな緑にならないときは、ミキサーの時間も確認してください。
- Q.ミキサーがなくても作れますか?
- A.作れます。葉をよく刻んで炒めれば、そのままソースになります。色は均一になりませんが、味は比較的近くなります。春菊のように柔らかい葉なら、強いミキサーでなくても回ります。
- Q.ほうれん草以外の青菜でも作れますか?
- A.作れます。からし菜、菜の花、春菊、小松菜はアナンのレシピにあります。菜の花の代わりとして、クレソンやルッコラの名前も料理教室で挙がっています。キャベツやレタスはイメージが違うので、葉の濃い野菜を選んでください。
- Q.パニールはどう用意しますか?
- A.牛乳1リットルとレモン汁40mlで作れます。レモンがなければお酢でも分離します。牛乳を沸かして弱火にし、酸と塩を加えて分離させ、布で漉して冷蔵庫で約30分。一晩固めると四角く切れます。カレーより先に作っておくと楽です。
- Q.マスタードオイルがありません。
- A.菜種油で作れます。普通のサラダ油でも構いません。同じようにギーはバターや普通の油に替えられます。味わいは変わりますが、作り方は同じです。
- Q.作ってから時間をあけて食べたいときは?
- A.ほうれん草を合わせる前のカレーの段階で止めておきます。食べる直前に、食べる人の分だけほうれん草を茹でて合わせるのが一番です。レストランでもよく使う手順です。



















