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ビリヤニ完全ガイド — インドの炊き込みご飯を家庭の定番に

レシピ22品・スパイスと米の選び方・炊飯器・キット・歴史まで。アナンのビリヤニのすべてを一枚の地図にまとめた完全ガイドです。

ビリヤニ完全ガイド — インドの炊き込みご飯を家庭の定番に

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ビリヤニは、スパイスとお米を層にして炊き上げるインドの炊き込みご飯です。パエリア、松茸ご飯と並んで「世界三大炊き込みご飯」に数えられることもある、香りのご飯の王様。カレーのように「かける」のではなく、香りを米に炊き込む。祝いの席のごちそうでありながら、いまでは屋台から家庭まで、インド中で愛される国民食です。

このページは、アナンのビリヤニに関するすべての入口です。店主のメタ・バラッツは月に一度のオンライン料理教室を開いていて、毎回のアンケートでリクエスト1位に決まって挙がるのがビリヤニでした。その特別講座で語られた実技のコツと、レシピ22品(基本のチキンから炊飯器、魚介、ラムまで)、スパイスと米の選び方、最短で本格に届くキット、歴史までを一枚の地図にまとめました。

ビリヤニとは — 蓋を開けるまでが、ごちそう

店主のバラッツは、ビリヤニについてnoteにこう書いています。

開けてはいけないよ。と言われると開けたくなるのが人の性。厳重に閉められていればいるほど中身は気になるもの。そして開けたら鮮やかな宝石が光り輝いている。私の中の「ビリヤニ」とはそのようなイメージである。神秘的で高貴で特別な料理。

ビリヤニの核心はダム(dum)と呼ばれる調理法にあります。半茹でにしたバスマティ米と、スパイスで仕立てた具を鍋に層で重ね、蓋を密封して弱火でじっくり蒸らす。米の一粒一粒が香りをまとい、同じ鍋の中に「白い米」「色づいた米」「具」のグラデーションが生まれます。カレーと白ご飯を別々に作って合わせるのとは、設計思想から違う料理です。

  • カレーとの違い……カレーは「ソースをかける」、ビリヤニは「香りを米に炊き込む」。汁気はなく、混ぜご飯とも炊き込みご飯とも違う独特のパラリとした食感が持ち味です。
  • ダム式(パッキ式)とは……具を先に調理してから米と重ねて蒸らす方式。密封弱火で香りを閉じ込める技法の原理はダムと層づくりで詳しく解説しています。
  • プラオ(ピラフ)との違い……生の米をだしで直接炊き上げる一段構えのやさしい米料理。バラッツいわく「ビリヤニがすき焼きだとしたら、プラオは肉じゃが」。柔らかく家庭的なのがプラオ、激しくめんどくさい(そして特別な)のがビリヤニです。
  • 晴れの日の料理……インドでも毎日食べるものではなく、結婚式やお祝いの席のごちそう。「レストランでもビリヤニは金曜日だけ」という店があるほどで、多めに炊いてみんなで囲むのが流儀です。

基本の作り方 — 流れは5ステップ

レシピごとに細部は変わりますが、ビリヤニの骨格はいつも同じです。カレーに一皿の工程地図があるように、ビリヤニにも決まった型がある。この5ステップの流れを頭に入れておくと、この先どのレシピを読んでも「いま地図のどこにいるか」が分かります。

写真付きの完全な手順はチキンビリヤニのレシピ(全12工程)で。「なぜ密封するのか」の原理はダムと層づくりが答えてくれます。まずは気軽に試したい方は、この流れを45分に圧縮した簡単ビリヤニからどうぞ。

そのうえで、バラッツが繰り返し教えてきた要点は3つです。

①塩は茹で湯の1.4%。ビリヤニは米を「炊く」のではなく「茹でる」料理です。1合(約200g)につき湯1リットル、その水量の1.4%の塩(1リットルなら14g)で、パスタのように米自体に下味を決めます。多く感じますが、湯は捨てるのでちょうどよくなります。

どこかでビリヤニを食べて物足りないなという時は、茹で加減の塩加減が物足りないんじゃないかな。お米に塩を入れて茹でるという感覚が日本の人たちにはあんまりない。そこをちょっと変えると、より簡単に美味しいビリヤニが作れるんじゃないかなと思います。(バラッツ、料理教室の実況より)

②米は兄弟のように。サンスクリットのことわざに「米粒は兄弟のようでなければならない。近くにいるが、くっついてしまってはダメだ」というものがあります。浸水は30分〜1時間、茹では芯が残る5分前後で引き上げる(あとの蒸らしで火が入ります)。そして茹で上がりをザルにあけないこと。下の米が上の重みで潰れて、べちゃっとした仕上がりの原因になります。網で上からすくって鍋に移すのが正解で、移している間も米は茹だり続けるので、全工程で唯一急ぐのはここだけです。

③ダムは蓋が命。層を組んだら密封して、強火5分→ごく弱火25分→火を止めて10〜30分蒸らし。蓋なしでは蒸気が逃げて焦げます(なければアルミホイル+重しで代用)。蒸らしで米がそりかえって「立って」きたら成功のサイン。本場には、炭火とパン生地で完全密封した鍋を叩いた音だけで炊き上がりを判定する職人もいます。途中で心配になったら、蓋を少しずらして香りを確かめてください。焦げた匂いがしなければ順調です。

仕上げは混ぜずに、下からすくって空気を入れるように大皿へ。「ここは白い、ここは茶色い、ここは黄色い」のまだら模様がハイデラバードの美学で、どこを食べても少しずつ違って全部美味しい、が正解の姿です。

そして覚えておきたい応用がひとつ。残りカレーはビリヤニになります。具に火が通っているパッキ式は自由自在で、余ったカレーを煮詰めて水分を減らし、半茹での米を重ねて蒸らすだけ。バラッツのキャンプの定番は、前日のカレーに茹でた米を重ねて焚き火にかける一鍋です。

どのレシピから作る? — 目的別の選び方

アナンのビリヤニレシピは22品。ぜんぶ読む必要はありません。自分の状況に合う1品から始めてください。

はじめての1皿なら

定番を極めるなら

魚介と季節で選ぶ

実はビリヤニは魚介と好相性。崩れやすい魚は「火を通した具に米を重ねる」パッキ式が向いている、という原理どおり、季節の魚で作り分けられるのがアナンのレシピ棚の自慢です。

変わり種なら、たけのこビリヤニチキンときのこのビリヤニのような季節の食材版もあります。

ごちそうにするなら

炊飯器で作るビリヤニ

「ダム式は鍋の火加減が不安」という方は、炊飯器に任せてしまうのが確実です。密封して蒸らすというダムの原理は、実は炊飯器の得意技そのもの。日本米でも作れるので、いちばん気軽な入口です。

ビリヤニに必要なスパイスと米

ビリヤニの香りは、特別な秘密ではなくホールスパイスの層でできています。それぞれの役割は図鑑(カルダモンシナモンクローブスターアニス)で、配合の考え方はマサラの設計図で読めます。中でもスモーキーなブラウンカルダモンは、ギーやヨーグルトの濃厚さと響き合う「炊き込みご飯向き」のスパイスです。

層に挟む三役にもコツがあります。サフランはぬるい牛乳に浸けて色を出してから、全体ではなくまだらに垂らすのが流儀。揚げ玉ねぎは市販のフライドオニオンでも作れますが、バラッツは「自分で揚げた玉ねぎが美味しい。少し黒くなっても心配せずに」と素揚げ推し。ミントとパクチーを層に挟むと、香りに立体感が出ます。

米 — バスマティで別世界になる

ビリヤニの主役は実は米です。バスマティとは「香りがあふれている」という意味の名前で、細長い米粒を1合につき1リットルの湯で茹でる(湯取り)のが、パラリとした食感の秘密。日本米でも作れますが、バスマティに替えた瞬間に「お店の味」に近づきます。選び方と炊き方は食材帖の米・バスマティでどうぞ。

最短で本格を — キットとブック、二つの近道

「まず一度、完成形を食べてみたい」なら近道が二つあります。鍋で本格派なら、スパイスとバスマティ米を計量済みで束ねた全部入りのチキンビリヤニキット。もっと気軽になら、専用マサラとレシピだけを束ねたビリヤニブックを炊飯器に任せる。お米はご家庭のもので大丈夫です。どちらも、一度「正解の味」を知ってから単品スパイスに進むと、レシピの解像度が一段上がります。

付け合わせ — ライタとショルバで食卓が完成する

インドでビリヤニは単品では出てきません。ヨーグルトのライタと、ピーナッツやトマト、タマリンドを煮込んだハイデラバードのグレービーショルバが両脇を固めます。もっとも、茹で塩がきちんと決まったビリヤニなら「ライタだけでも満足できる」というのがバラッツ流。ライタはヨーグルトに塩だけでも成立する、いちばん簡単な付け合わせです。スパイス入りの茹で湯も、スープにしてもいいほど美味しいので、捨てる前にぜひ味見を。

ビリヤニの歴史 — ムガル宮廷から屋台まで

名前はペルシャ語の「ビリンジ(米)」や「ビリヤン(調理する前に炒める)」に由来すると言われます。原型は、初代ムガル皇帝バーブルが故郷ペルシャ文化圏を懐かしんで宮廷で再現させた炊き込みご飯・プラオ。それがインド生まれの3代目アクバルの時代に、インドのスパイスと出会ってビリヤニになったのではないか、と語られています。同じプラオが西へ旅した先の姿を、バラッツはこう書いています。

ペルシャで生まれたプラオは人々の動きとともに様々な世界に広がっていった。スペインではパエリアになり、トルコではピラヴになり、イタリアではリゾットになった。インドではスパイスと出会いビリヤニになったのである。

ちなみにインドで「ビリヤニの誕生」を調べると、たいてい別の物語が出てきます。タージマハルを建てた皇帝の妃が、建設労働者の栄養を心配して考案した、米も肉もスパイスも入った「まかないの完全食」だったという説。バラッツの見立ては「食文化的には多分違うんだろう」ですが、いま私たちが知る形になったのはその時代かもしれない、とも。そこから各地の米と食文化に溶け込み、ハイデラバード、ラクナウ、コルカタ。土地の数だけスタイルが生まれました。全体像はビリヤニの歴史と米料理の系譜、宮廷料理の背景はムガル宮廷料理史、インドの米文化はインドの米食文化へ。

バラッツ自身にとっても、ビリヤニは節目の味です。祖父が1954年に船を買い、アナンの歴史が始まった港町ヴェラヴァル(グジャラート州)。そのルーツを訪ねる旅の途中、旧ポルトガル領の島ディウで食べた魚のカレーとビリヤニのことを、noteに書き残しています。日本でも少し前までビリヤニを食べられる店はわずかでしたが、いまやコンビニに並ぶ時代。このページが、家で炊く人を増やす一助になれば幸いです。

よくある質問

  • ビリヤニとはどんな料理?……スパイスで仕立てた具と半茹でのバスマティ米を層に重ね、密封して蒸らすインドの炊き込みご飯です。カレーのようにソースをかけるのではなく、香りを米に炊き込むのが特徴で、汁気のないパラリとした食感に仕上がります。
  • ビリヤニとカレーの違いは?……カレーは「ソース+ご飯」の組み合わせ、ビリヤニは「香りを炊き込んだ米そのもの」が主役の一品料理です。作り方も、具と米を層にして蒸らすダム式という独自の技法を使います。
  • ダム式(パッキ式)とは?……鍋を密封し弱火でじっくり蒸らして香りを閉じ込める調理法をダムと呼びます。具を先に調理してから米と重ねるのがパッキ式、生のマリネ肉と米を一緒に炊くのがカッチ式です。
  • べちゃっとしてパラパラになりません。……原因はだいたい4つ。①茹で上がりをザルにあけて米が潰れた(網で上からすくって移す) ②マリネのヨーグルトの入れすぎ ③茹ですぎ・浸水のしすぎ ④グレービーの水分が多い。米は芯が残る半茹でで引き上げるのがコツです。
  • 蒸らし中に蓋を開けてはいけない?……開けても失敗にはなりません。ただ蒸気は逃げるので、確かめたいときは蓋を少しずらして香りをかぐのがおすすめです。焦げた匂いがしなければ順調、香ばしすぎる匂いがしたらすぐ火を弱めてください。
  • 日本の米でも作れる?……作れます。炊飯器レシピなら日本米でも十分おいしく仕上がります。ただしパラリとした本場の食感はバスマティライスならでは。一度バスマティで作ると違いがはっきり分かります。
  • ビリヤニの素とキットの違いは?……当店のチキンビリヤニキットは、スパイスとバスマティ米を計量済みで組んだセットで、市販の「素」のような合わせ調味料ではありません。鶏肉を用意すれば、ホールスパイスから作る本格の工程をそのまま体験できます。もっと手軽な炊飯器向けには、専用マサラとレシピだけを束ねたビリヤニブック(お米は別途)もあります。
  • ビリヤニとプラオ(ピラフ)の違いは?……プラオは生の米をだしで直接炊く一段構えの米料理で、味わいは穏やか。ビリヤニは半茹での米とスパイスで仕立てた具を層に重ねて蒸らす二段構えで、香りが強く、白い米と色づいた米のコントラストが生まれます。ビリヤニの原型がプラオだと言われています。
  • 付け合わせは何を用意すればいい?……ヨーグルトのライタと、スープのショルバが定番の組み合わせです。どちらも当店のレシピで作れます。刻みサラダのカチュンバルやアチャールを添えると、より現地の食卓に近づきます。

このシリーズの完全ガイド: キーマカレーチャイアチャールもどうぞ。

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